2-9. 動詞のアクセント

目次


2-9-1 動詞

 現代京都言葉には、形容詞と同じようなアクセントの混同が動詞にも見られます。

2-9-1-1 動詞のアクセント体系

表1 動詞アクセント体系表
京都アクセント 参考・東京
アクセント
所属する語彙
現代京都 近世京都
(京阪式規範)
2
1類 ●● ●● ○● する・寝る・振る等
2類 ○● ○● ●○ 来る・見る・降る等
3
1類 5段 ●●● ●●● ○●● 上がる・終わる等
1段 上げる・終える等
2類 5段 ●○○ ○●○ 下がる・起こす等
1段 ○○● 下げる・起きる等
3類 5段 ○●● 歩く・隠す等
4
1類 ●●●● ●●●● ○●●● 始める・始まる等
2類 ●●○○ ○●●○ 預かる・逆らう等
3類 ○○○● ○●●● 抱える・関わる等
5
1類 ●●●●● ●●●●● ○●●●●
2類 ●●●○○ ○●●●○

 3類動詞を除いて、近世京都アクセントと東京アクセントとの間には「1拍ずれ」の法則が存在していたことが見て取れます。
 しかし現代京都アクセントでは、連用形が3拍以上ある2類動詞はすべて他の類へ合流してしまっているため、もはやかつてのように京都アクセントから東京アクセントを機械的に導き出すことができなくなっています。

 もっとも、厳密に言えば「なさる」「くださる」「遊ばす」「けつかる」など、待遇表現に関する動詞・補助動詞は、今も2類型のアクセント(それぞれ●○○/●●○○/●●○○/●○○○~●●○○)で発音される傾向にあります。また「困る」も、2類型の●○○という音調で発音される傾向があります。

 3拍2類の1段動詞(食べる・受ける・起きるなど)は、同1類との混同こそないものの、終止・連体形が●○○から○○●へ変化しました。これは過去・完了形のアクセントに引きずられて起こったもの(低起化)と考えられています。その時期については、『初期落語SPレコードの大阪アクセント - 資料と分析 -』(金沢裕之・金水敏・中井幸比古)によれば、だいたい明治の中頃のことであったようです。

 ちなみに高知は、表1の京都アクセントに近い体系が今も残っていることでよく知られています。

 なお上表で用いられている「3類」という呼び方は充分に確立されたものではありません。金田一春彦氏の類別語彙表のように、この類には番号を付けていないケースもあります。


2-9-2 動詞活用形のアクセント

 形容詞と同じく、動詞も活用によってアクセントが変化します。
 詳細は次のページ・「2-9-表.動詞の活用形アクセント一覧」にて示します。


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