名詞と副詞は、文法上はまったく違う役割を果たすものですけれども、どちらも「助詞(てにをは)を付けることができる」「形容詞や動詞とは違って活用しない」という共通点があるため、アクセントを考える上では同列に扱えます。
とはいえ活用しないということは、常にアクセントは一定ということですので、実際名詞や副詞については取り立てて述べることもありません。ただ1拍のものと2拍のものだけは、少し注意すべきことがありますので、その点だけ触れることにします。
なお以下では、いちいち「名詞と副詞」とは書かず、単に「名詞」とだけ記しますが、基本的にここから先、名詞について述べられていることは、そのまま副詞についても当てはまるものとお考えください。
| 京都アクセント | (参考)東京式アクセント | |
|---|---|---|
|
第1類 戸・子類 |
●●
(とぉ
・
こぉ) |
○-● (と-が ・ な-が) |
|
第2類 名・葉類 |
●○
(なぁ
・
はぁ) |
|
|
第3類 絵・手類 |
○●
(えぇ
・
てぇ) |
●-○ (て-が) |
以上3種類あります。
1拍名詞で注意すべきは、「1.名詞と代名詞」でも紹介したように、京都では1拍の名詞は語尾引きによって2拍相当の長さになるという点です。
そのため助詞を付けずとも、「日ぃ /●○」と「火ぃ /○●」とを言い分けたり、「気ぃ /●●」と「木ぃ /○●」とを言い分けたりすることができます。
| 京都アクセント | (参考)東京式アクセント | |
|---|---|---|
| 第1類 風・水類 |
●● (かぜ) | ○●-● (かぜ-が) |
| 第2類 夏・冬類 |
●○ (なつ) | ○●-○ (なつ-が) |
| 第3類 | 現代では京都・東京ともに第2類に統合されている。 | |
| 第4類 海・空類 |
○● (うみ) ○●-● (うみ-が) | ●○-○ (うみ-が ・ はる-が) |
| 第5類 春・秋類 |
○▼ (はるぅ) ○●-○ (はる-が) | |
以上の4種に分類されます。
2拍で注意すべきは、4類名詞(海・空・麻など)と5類名詞(春・秋・朝など)との違いです。
4類名詞は低い音[○]で始まり、2拍目で音程が上がって高い音[●]のまま終わります。しかし5類名詞は、低い音[○]で始まり、2拍目でいったん音程が上がって高い音[●]になったかと思うと、すぐさま音程が下がるのです。
つまり5類名詞は、2拍目=最後の拍が音程を下げながら発音される関係上、「はるぅ」「あめぇ」という具合に軽い語尾引きが起こるのです。
また4類は高い音で終わるので、助詞が付いてもその助詞固有のアクセントが生かされますが、5類は低い音で終わるので、5類に付く助詞は種類を問わず、低く平らに発音されます(上表参照)。
なお、4類名詞と5類名詞との詳しい分類については、巻末資料のこちらのページに用意した表をご覧ください。
京阪式アクセントの体系上、考えられる型すべてが、実際に名詞のアクセントとして現れます。
| 音程の下がり目の位置 | 京都アクセントの体系 | |
|---|---|---|
| 1拍目は高い | 1拍目は低い | |
| ない | ●●● こおり(氷) |
○●● おやこ(親子) |
| 単語の終わりにある | ●●○ ことば(言葉) |
○●○ うしろ(後ろ) |
| 1拍目の後ろにある | ●○○ いのち(命) |
発音不可 |
| 音程の下がり目の位置 | 京都アクセントの体系 | |
|---|---|---|
| 1拍目は高い | 1拍目は低い | |
| ない | ●●●● はじまり(始まり) |
○●●● かかわり(関わり) |
| 単語の終わりにある | ●●●○ かんがえ(考え) |
○●●○ いろがみ(色紙) |
| 2拍目の後ろにある | ●●○○ ひとびと(人々) |
○●○○ ブランコ |
| 1拍目の後ろにある | ●○○○ うぐいす(鶯) |
発音不可 |
基本的には上に挙げた表の通りなのですが、実際のところ現代の京都では、●●○型と●○○型とが区別されず、両方とも●○○型で発音されることが多いようです。しかしこれらを発音しわけても、もちろん間違いではありません。そちらのほうが、より規範的です。
東京アクセントには、単語の始まりは必ず ○●‐ か ●○‐ になるという暗黙のルールがありますが、京阪式アクセントにはそのような縛りがありません。
そのため3拍以上の名詞は、一般に「名詞の拍数×2-1」種類のアクセント型があるといわれています。
3拍名詞: 3×2-1=5種類
4拍名詞: 4×2-1=7種類