「絵」「木」「手」「名」などの1拍語は語尾を引いて、「絵ぇ/○●」「木ぃ/○●」「手ぇ/○●」「名ぁ/●○」とあたかも2拍語であるかのように発音されます。
この発音傾向は助詞がついたときにも、「手ぇが痛い」「絵ぇを描く」などのように現れることがあるため、現代京都には純粋な1拍名詞がないというふうにも言えます。
京ことばには、「が」「は」「を」「と」「へ」などの助詞を省く傾向があります。
「誰か、買い物(を)頼まれてくれへん?」
「私(が)行こか? 何(を)買うてくんの?」
「時計の電池(が)切れてなあ。ちょっと○○(へ)行ってきてほしいんや」
「え~っ、あのお店(は)遠いわー。近所で売ってるとこ(は)ないの?」
「ないこと(は)ないけど、○○のほうが安いにゃわ」
「そうかなー、ある(と)思うけどなー」
「まぁあんたが安い(と)思うお店で買うてきて。はいお金」
「いらんこと(を)言うんやなかった……ほないてきます」
「はい。おはようおかえり」
今日では文脈が曖昧にならぬ限り、日常会話においてこの手の助詞は省かれるのが原則と考えたほうが良いでしょう。
もっともこの傾向はそれほど古くからあるものではなく、どうも幕末~明治時代以降に広まったもののようです。近世末期に京都で出版された文学の会話部分には、それほど助詞の省略が目立たないからです。
いわゆる「こそあど」体系です。
| 近称 | 中称 | 遠称 | 不定称 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 指示 | これ ●● |
それ ●● |
あれ ●○ *1 |
かれ ●○ |
どれ ●● |
だれ ●● |
| 場所 | ここ ○● |
そこ ○● |
あこ ○● あそこ ○●● |
どこ ●● |
||
| 方向 | こちら ○●● こっち ○●● |
そちら ○●● そっち ○●● |
あちら ○●● あっち ○●● |
どちら ○●● どっち ○●● |
||
| 形容 | この ●● |
その ●● |
あの ●● |
どの ●● |
||
| 様態 | こう ●● |
そう ●● |
ああ ●● |
どう ●● |
||
| こんな ●●● |
そんな ●●● |
あんな ●●● |
どんな ●●● |
|||
| こない ●●● |
そない ●●● |
あない ●●● |
どない ●●● |
|||
共通語と異なる特徴として、場所の遠称に「あこ」という表現があります。
また中称「そ-」の系列には、語頭子音[s]が[h]に転じた「そんな→ほんな」「それなら→ほれなら」という言い方もあります(参照⇒京ことばの音韻・「サ行」→「ハ行」)。
なお一応上の表には入れてありますが、「こない‐そない‐あない‐どない」の系列は大阪弁だとする考え方もあります。
1人称には、
などがあります。「ワシ」は若年層でも使うことがあります。
他にも「あたし」の変化形「あて」や、特殊階級の中でのみ用いられる人称代名詞などがありますが、今日ではあまり一般的ではありませんので、ここでは割愛します。
2人称には、
などがあり、この順で品格が下がります。
「おまえ」という言葉には東京語ほどぞんざいな印象はありません。男性が同輩以下の親しい相手を呼ぶ場合は、たいていこれです。
3人称には、
などがあります。
もっとも京都でも共通語同様に、名前が分かる人のことを話題にする時はその人の名前を直接呼ぶのが普通で、2人称・3人称代名詞の使用は避けられる傾向にあります。