1-8 断定の「や」「にゃ」

目次


1-8-1 断定の「や」「じゃ」「にゃ」「ね(ん)」

 他府県の方が関西の言葉と聞いてまず思い浮かべるのが、「そう」「するん」などの「や」ではないでしょうか。
 これは「断定の助動詞」と言われ、共通語の「そう」「するん」などの「だ」にあたるものです。
 この「や」と「だ」は意味だけでなく実は成立過程も同じで、元々「〜である」であったものが以下のように変化してできたものです。

表1 「や」と「だ」の成立過程
地区鎌倉時代室町時代江戸時代明治以降
京阪及びその周辺部 である であ ぢゃ(じゃ)
近畿地方以外の西日本 ぢゃ(じゃ)〜や
東日本

 語源も成立過程も同じですので、当然ながら活用の仕方も「や」と「だ」は似ています。

表2 「や」と「だ」の活用比べ
助動詞「や」助動詞「だ」
言い切り
過去形 やった ○○○ だった
推量形 やろう ●○○ * だろう

 しかし、こと用法となるとかなり異なります。
 もっとも異なるのが、「や」は助詞「の」を介して、丁寧語「です・ます」にもつくという点です。東京では「しますのだ」「そうですだろう」などとは普通言いませんが、京都では、

 などの言い方がごくごく普通になされます。つまり共通語では「だ」と「ます/です」とが対立するのに対し、京都言葉では「や」と「ます/どす(です)」とが対立しないわけです。
 なお余談ですが、最後の「どすやろ・ですやろ/●●●○」は約まって「どっしゃろ・でっしゃろ/●●●○」ともなります。

 上の成立過程図でも示したとおり、「じゃ」は「や」の古形です。しかし現在でも「や」の強調形として、主にいらだちを表現する時などに使われます。

例:

「何してんにゃ?(普通の口調)」「何しとんのじゃ!?(激高)」

 「にゃ」と「ね(ん)」はともに「〜するのや」「〜あるんや」などの「のや/んや」の部分が変化してできたもので、「何すんにゃ」「きっとこれから行くにゃわ」「これから出かけん」という風に、動詞につけて使います。
 ただし「にゃ」も「ね(ん)」も過去形にはつきません。「したのや」は「したんや」か「してん」と言い、「したにゃ」「したねん」とは言いませんのでご注意を。

 ちなみに「美しいやんか」「見事やんか」等の「やんか」は、断定の「や」とは関係ありません。これは「〜ではないか」→「〜じゃないか」→「〜やないか」→「〜やんか」という変遷を経た結果、結果的に断定の「や」と同じ音になっただけです。
 なお「〜やんか」については、語彙集の「やん・やんか」の項もご覧ください。

 さて先ほどから頻出しているので気になっている方もいらっしゃるかもしれませんが、「る」で終わる動詞に、これら「の・んや・にゃ・ね(ん)」など「子音N」で始まる語尾がつくと、「る」は「ん」になることがあります(参照⇒「『る』の撥音化」)。

例:

「いね(ん)→いね(ん)」 「すにゃ→すにゃ」 「何見の?→何見の?」

 しかしこの発音傾向も多用すると、「うまいことできんなあ」のように「できるなあ/●●●●○」の意味にも、「できぬなあ/●●●●○」の意味にも取れてしまうケースが出てきますので、ご注意を。


Valid XHTML 1.0 Strict