1-2. 形容詞

目次


1-2-1 形容詞

1-2-1-1 形容詞の活用

 「高い」という言葉を例に、形容詞の活用形を示します。

表1 「高い」の活用形
終止・連体 たかい ●○○
連用 たこう ○●○
連用中止 たこうて(たこて) ○●○○(○●○)
たかかって ○●○○○
過去(完了) たかかった ○●○○○
仮定 たかかったら ○●○○○○
たかけりゃ ○●○○

 共通語との違いとして、

  1. 連用形の語尾が「く」ではなくて「う」になる。
  2. 連用中止形に「たかかって」という言い方がある。
  3. 仮定形に「たかければ」という言い方がない。

 などがあげられます。

 1.は「ウ音便」と呼ばれ、西日本方言に共通して見られる現象です。もっとも最近では共通語風に「たかく」という人も増えてますが、京都本来の言い方としては「たこう」です。

 このウ音便は、直前の語幹母音を以下のように変化させます。

表1 動詞のウ音便
直前の母音 変化の仕方
直前の母音が[a]の場合 [a-u]→[o:] 高い(たい)→高う(たう)
直前の母音が[i]の場合 [i-u]→[ju:] 欲しい(ほい)→欲しゅう(ほしゅう)
直前の母音が[u]の場合 [u-u]→[u:] 薄い(うすい)→薄う(うすう)
直前の母音が[e]の場合 [e-u]→[jo:] (現代語にはなし)
直前の母音が[o]の場合 [o-u]→[o:] 遅い(おそい)→遅う(おそう)

 ただし「美しゅう」「大きゅう」などは、口語において「美しゅ」「大きゅ」と約まったり(母音短縮)、「美しぃ」「大きぃ」と「しぃ」のような発音になること(「ゆ」の直音化)が多いようです。

 また「ない」の連用形(副詞用法)は通常「のう」ですが、この言い方は原型「なく」を連想しづらいこともあってか、以下のような言い換えがよくなされます。

例:

 「のうなる(なくなる)」→「ないようになる」「あらへんようになる」
 「何とのう(何となく)」→「何となしに
 「仕方のう(仕方なく)」→「仕方なしに

 2.のような表現は、共通語ではまず使われませんが、京都では使われることあります。

 3.は京都人でも気づいていない方が多いのではないでしょうか。かくいう私も指摘されるまで自覚していませんでしたが、「高ければ」「良ければ」のような「ければ」という仮定表現は、京都人の感覚としてはかたっくるしく聞こえるため、日常語としてはまず使われません。京都では文章語化したといっても良いでしょう。
 仮定表現は、「たかかったら」「たかけりゃ(幾分古風)」と言うのが普通です。

1-2-1-2 形容詞の特殊用法 ~ 感嘆表現

 にわかに心にわき上がってきた感情を表現するのに、共通語や東京語では形容詞をそのまま使って言い表しますが、京ことばでは形容詞の語尾を取った形(語幹といいます)を使って言い表します。

表2 感嘆・詠嘆表現
京ことば共通語東京訛
指をぶつけた時 いた! いたい! いて!
不意に氷に触れた時 つめた! つめたい! つめて!

 この時、形容詞の直前に感動詞「あぁ」や「おぉ」などをつけて、「ああしんど」や「おおさむ」などともよく言います。

 なお感嘆の際、東京では「うわっ」という言葉がよく使われますが、京都では「いやっ」という言葉がよく使われます。

例:

東京の場合「うわっ、いきなり後ろからおどかすなよ」
京都の場合「いやっ、いきなり後ろからおどかさんといていな」

1-2-1-3 形容詞の丁寧形

 京ことばでは形容詞を丁寧化するとき、連用形に「おす」というサ変動詞をつけて、

 などと言います。
 しかし残念ながら最近では「おす」という言葉そのものが衰退しつつあるため、平行してこの「赤うおす」型の表現も衰退しつつあります。
 なお「おす」については「10.丁寧語」でも取り上げています。

1-2-1-4 形容詞の短縮形

 特に小・中学生ぐらいの年代で、長い形容詞を短縮して言うことがあります。

例:

めんどい(めんどくさい)
うっとい(鬱陶しい)

 どちらかというと、上に挙げた例のように、否定的な意味を持つ形容詞ほど短縮されやすいようです。
 そこそこ年の行った方の中にも使う方はいるようですが、いずれにせよ相手に子供っぽい印象を与える言い方なので、あまりお勧めはしません。


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